電磁気学の基礎方程式であるMaxwell方程式から波動方程式を導出してみます。
さらに次の記事では、この結果を使ってz軸に伝搬するGausian beamを導いて、その性質をみてみたいと思っています。
はじめに
現代科学では、レーザーを使うことが少なくない。
レーザーを使って微小な動きを測定したり、ピンセットとして原子を掴んだり、もっと工学的な分野では例えば物の切断にも使われています。
このレーザーの中でも、強度分布が光軸中心から外に向かって次第に減っていくGaussian beamというのがよく使われています。
最終的にはGaussian beamを導くのを目的に、まずはMaxwell方程式から波動方程式を導出します。
Maxwell方程式を受け入れれば、結構、簡単です。
Maxwell方程式
まず、一般的なMaxwell方程式を下記に記します。
$$
\begin{align}
\nabla\cdot\vec{D}(t, \vec{x}) &= \rho(t,\vec{x}) \\
\nabla\cdot\vec{B}(t, \vec{x}) &= 0 \\
\nabla\times\vec{E}(t, \vec{x}) &= -\frac{\partial \vec{B}(t, \vec{x})}{\partial t} \\
\nabla\times\vec{H}(t, \vec{x}) &= \frac{\partial \vec{D}(t, \vec{x})}{\partial t} + \vec{j}(t, \vec{x})
\end{align}
$$
ここで、\( \vec{E} \) は電場の強度、\( \vec{B} \) は磁束密度、\( \vec{D} \) は電束密度、\( \vec{H} \) は磁場の強度です。
これを真空の場合に書くと、
$$
\begin{align}
\vec{D} &= \epsilon_0\vec{E} \\
\vec{H} &= \frac{1}{\mu_0}\vec{B} \\
\rho &= 0 \\
\vec{j} &= 0
\end{align}
$$
から、次のようになります。
$$
\begin{align}
\nabla\cdot\vec{E}(t, \vec{x}) &= 0 \ \ \ \ (1)\\
\nabla\cdot\vec{B}(t, \vec{x}) &= 0 \ \ \ \ (2)\\
\nabla\times\vec{E}(t, \vec{x}) &= -\frac{\partial \vec{B}(t, \vec{x})}{\partial t} \ \ \ \ (3)\\
\nabla\times\vec{B}(t, \vec{x}) &= \epsilon_0\mu_0\frac{\partial \vec{E}(t, \vec{x})}{\partial t} \ \ \ \ (4)
\end{align}
$$
これが真空中でのMaxwell方程式となります。
ここで真空中を考えた理由は、真空中を考えると式が簡単になるからで、いわば近似です。
ベクトル演算の公式
ここで下記で使用するベクトル演算の公式を1つ紹介します。
$$
\nabla\times\nabla\times\vec{V} = \nabla(\nabla\cdot\vec{V})-\nabla^2\vec{V}
$$
これの証明は面倒なので気になる方はgoogle先生に聞いてみてください。
真空中のMaxwell方程式からの式変形で波動方程式を得る
ここから、真空中のMaxwell方程式と上記のベクトル演算の方程式を元に、波動方程式を導きます。
波動方程式とは、「波」を表す方程式で、この方程式の形をとるような場合には空間的に、時間的に波のような性質を持ちます。
波動方程式は下記のような形です。
$$
\left( \nabla^2 – \frac{1}{v^2}\frac{\partial^2}{\partial t^2} \right)\vec{V} = 0
$$
\( \vec{V} \) や\( \vec{V} \) がこの形になれば、波動として伝わっていることになります。
簡単です。
電場について
とりあえず\( \nabla\times\nabla\times\vec{E} \) を計算してみる。
Maxwell方程式の式(3)と式(4)から
$$
\begin{align}
\nabla\times\nabla\times\vec{E} &= \nabla\times\left( -\frac{\partial \vec{B}}{\partial t}\right) \\
&= -\frac{\partial}{\partial t}(\nabla\times\vec{B}) \\
&= -\epsilon_0\mu_0\frac{\partial^2 \vec{E}}{\partial t^2}
\end{align}
$$
となる一方で、前述のベクトル公式によって次のようにも計算できます。
$$
\begin{align}
\nabla\times\nabla\times\vec{E} &= \nabla(\nabla\cdot\vec{E})-\nabla^2\vec{E} \\
&= -\nabla^2\vec{E}
\end{align}
$$
ここではMaxwell方程式の式(1)も利用した。
この2式の左辺は\( \nabla\times\nabla\times\vec{E} \) で同じなので、次の式が成り立つことになります。
$$
\nabla^2\vec{E} = \epsilon_0\mu_0\frac{\partial^2 \vec{E}}{\partial t^2} \\
\rightarrow \left( \nabla^2 – \epsilon_0\mu_0\frac{\partial^2}{\partial t^2}\right) \vec{E} = 0
$$
これはまさに波動方程式ですね。
磁場について
同様に\( \vec{B} \) についても式変形してみます。
$$
\begin{align}
\nabla\times\nabla\times\vec{B} &= \nabla\times\left( \epsilon_0\mu_0\frac{\partial \vec{E}}{\partial t}\right) \\
&= \epsilon_0\mu_0\frac{\partial}{\partial t}(\nabla\times\vec{E}) \\
&= -\epsilon_0\mu_0\frac{\partial^2 \vec{B}}{\partial t^2}
\end{align}
$$
と
$$
\begin{align}
\nabla\times\nabla\times\vec{B} &= \nabla(\nabla\cdot\vec{B})-\nabla^2\vec{B} \\
&= -\nabla^2\vec{B}
\end{align}
$$
から
$$
\nabla^2\vec{B} = \epsilon_0\mu_0\frac{\partial^2 \vec{B}}{\partial t^2} \\
\rightarrow \left( \nabla^2 – \epsilon_0\mu_0\frac{\partial^2}{\partial t^2}\right) \vec{B} = 0
$$
まとめ
以上のように、真空のMaxwell方程式から次のような電場・磁場の伝搬の方程式が得られました。
$$
\left( \nabla^2 – \epsilon_0\mu_0\frac{\partial^2}{\partial t^2}\right) \vec{E} = 0 \\
\left( \nabla^2 – \epsilon_0\mu_0\frac{\partial^2}{\partial t^2}\right) \vec{B} = 0
$$
前述の波動方程式と比較すると、この波の伝搬速度は、\( \frac{1}{\sqrt{\epsilon_0\mu_0}} \) であることがわかります。
これはすなわち光速になります。
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