反変ベクトルと共変ベクトルを例示して簡単に説明

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私は今相対論を復習しているのですが、本当に理解しようと思うとテンソルでまずは躓く。

そのテンソルを理解しようと思って調べていくと反変ベクトル、共変ベクトルで躓く。

今回、反変ベクトルと共変ベクトルについて、理解を深めましたので、今回は例を示しながら、簡単に説明したいと思います。

目次

概要

まず、今回の説明を1枚にまとめました。

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反変ベクトル・共変ベクトルとは、座標変換にとても関わりが深いものです。

座標変換とは、いわば座標軸を変えるということです。

これを行うと、旧座標系( \(S\) 系)での各ベクトル(例: 座標ベクトル、速度ベクトル)と、新座標系( \(S’\) 系)での各ベクトルの値が変わります。

この値がどう変化するかで、そのベクトルの反変・共変が決まります。

実際には、座標ベクトルと同じ変化なら反変ベクトル、逆の変化なら共変ベクトルとなります。

また、世界共通のルールとして、反変ベクトルの場合には右上に添字を、共変ベクトルの場合には右下に添字を書くことになっています。添字は、各成分( \( x, y, z \) など)を意味しています。

以下で2次元を例に詳しく見ていきます。

座標変換

次のような座標変換を考える。

\( S \) 系から \( S^\prime \) 系への線形直行座標変換を考える。

この場合、変換前の座標( \( S \) 系から見た座標)と変換後の座標\( ( S^\prime \) 系から見た座標)ではもちろん値が違ってくる。

この2つの関係は次のように表せる。

$$ \begin{pmatrix} x^\prime \\ y^\prime \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} A_{11} & A_{12} \\ A_{21} & A_{22} \end{pmatrix} \begin{pmatrix} x \\ y \end{pmatrix} + \begin{pmatrix} B_1 \\ B_2 \end{pmatrix} $$

\( A, B \) は適当な数字である。

例えば、 \( \theta \) だけ座標軸が回転した場合の座標変換では次のようになります。

$$ \begin{pmatrix} x^\prime \\ y^\prime \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} \sin\theta & \cos\theta \\ -\cos\theta & \sin\theta \end{pmatrix} \begin{pmatrix} x \\ y \end{pmatrix} $$

さて、最初の式を次のように書き換えてみます。意味は全く同じです。

$$ \begin{pmatrix}
x^\prime \\
y^\prime \end{pmatrix} = \begin{pmatrix}
A_{11}x + A_{12}y + B_1 \\
A_{21}x + A_{22}y + B_2 \end{pmatrix}
=\begin{pmatrix}
x^\prime(x,y)\\
y^\prime(x,y)
\end{pmatrix} $$

上記は結局、 \( S^\prime \) 系の座標( \( x^\prime,y^\prime \) )は、 \( S \) 系の座標( \( x,y \) )を使ってその線形結合で表すことができる、ということを意味しているだけ。

座標ベクトルの変換

さて、座標変換された時、座標ベクトルはどのように変換されるだろうか。

座標ベクトルは、座標値とは違ってベクトルなので、その始点は原点である。

なので、座標ベクトルの変換は単に上記の \( B_1, B_2 \) がそれぞれ0であるということになるだけ。

$$ \begin{pmatrix}
x^\prime \\
y^\prime \end{pmatrix} =
\begin{pmatrix}
A_{11} & A_{12} \\
A_{21} & A_{22}
\end{pmatrix}
\begin{pmatrix}
x \\
y
\end{pmatrix} $$

これはよくみると次のように書けることがわかります。

$$ \begin{pmatrix} x^\prime \\ y^\prime \end{pmatrix}
=
\begin{pmatrix}
\frac{\partial x^\prime}{\partial x}x + \frac{\partial x^\prime}{\partial y}y \\
\frac{\partial y^\prime}{\partial x}x + \frac{\partial y^\prime}{\partial y}y
\end{pmatrix} $$

これをさらに表現を変えてみる。
次のように変数を書き換える。

$$ \begin{cases}
x^0=x \\ x^1=y \\ x^{\prime 0} = x^\prime \\ x^{\prime 1} = y^\prime
\end{cases} $$

すると次のようになります。

$$ \begin{pmatrix} x^{\prime 0} \\ x^{\prime 1} \end{pmatrix}
=
\begin{pmatrix}
\frac{\partial x^{\prime 0}}{\partial x^0}x^0 + \frac{\partial x^{0 \prime}}{\partial x^1}x^1 \\
\frac{\partial x^{\prime 1}}{\partial x^0}x^0 + \frac{\partial x^{1 \prime}}{\partial x^1}x^1
\end{pmatrix} \\
\Rightarrow
x^{\prime i} = \frac{\partial x^{\prime i}}{\partial x^0}x^0 + \frac{\partial x^{\prime i}}{\partial x^1}x^1$$

ここで \( i \) は0または1を意味します。

これをさらに簡単に見えるように表現を変えてみる。そう、アインシュタインの縮約という表現方法を導入します。
そんな難しい事はなく、単に表現として、「同じ添字がある時は、その総和をとる」というものを導入するだけ。

$$ x^{\prime i} = \frac{\partial x^{\prime i}}{\partial x^k}x^k \ \ \ \ (A) $$

つまりこの場合には添字 \( k \) を全て( \( k= 0, 1 \) )足し合わせます。これはそのまま上の式になります。

この式Aが座標ベクトルの座標変換の式になります。

座標がどのように変換されるか、つまり \( x^{\prime i}, i=0, 1 \) の形がわかれば、座標ベクトルの変換ができるという事です。

この変換式が今後の議論の基準になります。
具体的には、この変換式と同じ変換式( \( \frac{\partial x^{\prime i}}{\partial x^k} \) )を使用して座標変換されるベクトルを反変ベクトルといい、逆変換( \( \frac{\partial x^k}{\partial x^{\prime i}} \) )を使用して座標変換されるベクトルを共変ベクトルという。

反変ベクトル

「反変ベクトル」とは、座標変換時に、上記の座標ベクトルと同じ変換を使って変換されるベクトルをいいます。

その場合、添字は右上に書くことというルールが世界で認められています。

$$ V^{\prime i} = \frac{\partial x^{\prime i}}{\partial x^k}V^k \ \ \ \ (B) $$

例: 速度ベクトル

ここで速度ベクトルが、反変ベクトルであることを示してみたいと思います。

簡単のためにニュートン力学の範囲で考える。

速度ベクトル \( \boldsymbol{v} \) は次のように定義されている。

$$
v^i = \frac{\partial x^i}{\partial t}
$$

座標変換後では次のようになります。

$$
\begin{align}
v’^i &= \frac{\partial x’^i}{\partial t} \\
&= \frac{\partial}{\partial t} \frac{\partial x^{\prime i}}{\partial x^k}x^k \\
&= \frac{\partial x^{\prime i}}{\partial x^k} \frac{\partial x^k}{\partial t} \\
&= \frac{\partial x^{\prime i}}{\partial x^k} v^k
\end{align}
$$

ここでは2つ目のイコールでアインシュタインの縮約を利用しており、3つ目のイコールでは偏微分が交換できることを利用しました。

この結果、速度ベクトルの変換はまさに式(B)の変換式と同じになった。

ということで、速度ベクトルは反変ベクトルとなります。

共変ベクトル

「共変ベクトル」とは、座標変換時に、座標ベクトルと「逆の変換」を使って変換されるベクトルをいいます。

その場合、添字は右下に書くことというルールが世界で認められています。

$$ U^{\prime}_i = \frac{\partial x^k}{\partial x^{\prime i}} U_k \ \ \ \ (C) $$

「逆の変換」とは?

反変ベクトルの場合には、新座標系 \( S^\prime \) の関数を旧座標系 \( S \) の変数で微分していた結果が変換係数でしたが、共変ベクトルではこれが逆の変換になり旧座標系 \( S \) の関数を新座標系 \( S^\prime \) の変数で微分した値が変換係数になります。

式(B)と式(C)を比べてみればわかります。

例: ポテンシャルの勾配ベクトル

まず、「ポテンシャルの勾配ベクトル」を定義します。

2次元空間に貼られているポテンシャル(例えば重力ポテンシャルなど)を考えます。

「ポテンシャルの勾配ベクトル」とは、その空間の適当な点での最大勾配の方向と勾配の大きさをベクトルで示したものです。

イメージ図を下記に示しておきます。

potential

ポテンシャル勾配ベクトルをイメージした矢印を2つ図中に示しています。

緑矢印は-y軸向きに、少し長いベクトル(勾配が急なので)で、オレンジ矢印は \( -x, -y \) の向きに少し短いベクトル(勾配が緩やかなので)となります。

\( \phi(\vec{x}) \) をポテンシャル関数とすると、勾配ベクトルの各成分 \( u_i, i=0,1 \) は次のように表されます。

$$ u_i = \frac{\partial\phi(\vec{x})}{\partial x^i} $$

座標変換後では次のようになります。

$$ \begin{align}
u^\prime_i &= \frac{\partial\phi(\vec{x})}{\partial x^{\prime i}} \\
&= \frac{\partial x^k}{\partial x^{\prime i}}\frac{\partial \phi(\vec{x})}{\partial x^k} \\
&= \frac{\partial x^k}{\partial x^{\prime i}}u_k
\end{align}
$$

このように勾配ベクトル \( \boldsymbol{u} \) は \( \frac{\partial x^k}{\partial x^{\prime i}} \) で変換されるため、共変ベクトルである。

ここで注意すべきは2つ目、3つ目のイコールで回転前の座標ベクトルの総和を次のようなアインシュタインの縮約を使用していること。

$$
\frac{\partial x^k}{\partial x^{\prime i}}\frac{\partial \phi(\vec{x})}{\partial x^k} = \left( \frac{\partial x^1}{\partial x^{\prime i}}\frac{\partial}{\partial x^1} + \frac{\partial x^2}{\partial x^{\prime i}}\frac{\partial}{\partial x^2} \right)\phi(\vec{x})
$$

それと、座標変換をしても、その地点でのポテンシャルは変わらないという次の式を利用しています。

$$ \phi(\vec{x}) = \phi(\vec{x}^\prime) $$

座標変換例を使って、より具体的に理解する。

次のような座標変換例を使って、ちゃんと速度ベクトルが反変ベクトルであり、ポテンシャル勾配ベクトルが共変ベクトルであることをみていきます。

$$
\begin{pmatrix}
x^{\prime} \\
y^{\prime}
\end{pmatrix}
=
\begin{pmatrix}
3 & 5 \\
4 & 7
\end{pmatrix}
\begin{pmatrix}
x \\ y
\end{pmatrix}
+
\begin{pmatrix}
1 \\ 2
\end{pmatrix}
$$

この座標変換の逆変換も示しておきます。(適当に選んだ座標変換だったけど、運良く逆行列も綺麗なものになった。)

$$
\begin{pmatrix}
x \\
y
\end{pmatrix}
=
\begin{pmatrix}
7 & -5 \\
-4 & 3
\end{pmatrix}
\begin{pmatrix}
x^{\prime} \\ y^{\prime}
\end{pmatrix}
+
\begin{pmatrix}
3 \\ -2
\end{pmatrix}
$$

変換例: 速度ベクトル(反変ベクトル)

\( S^\prime \) 系での速度ベクトルを定義から始めて、\( S \) 系の速度ベクトルで表してみる。

$$
\begin{align}
\begin{pmatrix}
v_x^\prime \\ v_y^\prime
\end{pmatrix}
&=
\begin{pmatrix}
\frac{\partial x^\prime}{\partial t} \\ \frac{\partial y^\prime}{\partial t}
\end{pmatrix}\\
&=
\begin{pmatrix}
\frac{\partial}{\partial t}(3x+5y+1) \\
\frac{\partial}{\partial t}(4x+7y+2)
\end{pmatrix}\\
&=
\begin{pmatrix}
3 & 5 \\
4 & 7
\end{pmatrix}
\begin{pmatrix}
\frac{\partial x}{\partial t} \\
\frac{\partial y}{\partial t}
\end{pmatrix}\\
&=
\begin{pmatrix}
3 & 5 \\
4 & 7
\end{pmatrix}
\begin{pmatrix}
v_x \\ v_y
\end{pmatrix}
\end{align}
$$

これはまさに座標ベクトルの変換と同じ変換ですので、速度ベクトルが反変ベクトルであることがわかります。

変換例: ポテンシャルの勾配ベクトル(共変ベクトル)

次にポテンシャルの勾配ベクトルをみてみます。

$$
\begin{align}
\begin{pmatrix}
u_x^\prime \\
u_y^\prime
\end{pmatrix}
&=
\begin{pmatrix}
\frac{\partial \phi(\boldsymbol{x}^\prime)}{\partial x^\prime} \\
\frac{\partial \phi(\boldsymbol{x}^\prime)}{\partial y^\prime}
\end{pmatrix} \\
&=
\begin{pmatrix}
\frac{\partial \phi(\boldsymbol{x})}{\partial x^\prime} \\
\frac{\partial \phi(\boldsymbol{x})}{\partial y^\prime}
\end{pmatrix} \\
&=
\begin{pmatrix}
\left( \frac{\partial x}{\partial x^\prime}\frac{\partial }{\partial x} + \frac{\partial y}{\partial x^\prime}\frac{\partial }{\partial y} \right) \phi(\boldsymbol{x}) \\
\left( \frac{\partial x}{\partial y^\prime}\frac{\partial }{\partial x} + \frac{\partial y}{\partial y^\prime}\frac{\partial }{\partial y} \right) \phi(\boldsymbol{x})
\end{pmatrix} \\
&=
\begin{pmatrix}
\left( 7\frac{\partial }{\partial x} – 4\frac{\partial }{\partial y} \right) \phi(\boldsymbol{x}) \\
\left( -5\frac{\partial }{\partial x} + 3\frac{\partial }{\partial y} \right) \phi(\boldsymbol{x})
\end{pmatrix} \\
&=
\begin{pmatrix}
7 & -4 \\
-5 & 3
\end{pmatrix}
\begin{pmatrix}
\frac{\partial \phi(\boldsymbol{x})}{\partial x} \\
\frac{\partial \phi(\boldsymbol{x})}{\partial y}
\end{pmatrix} \\
&=
\begin{pmatrix}
7 & -4 \\
-5 & 3
\end{pmatrix}
\begin{pmatrix}
u_x \\
u_y
\end{pmatrix}
\end{align}
$$

これはまさに逆変換なので、ポテンシャルの勾配ベクトルが共変ベクトルであることがわかります。

まとめ

下記のような線形な座標変換を考えます。

$$
x^{\prime i} = \frac{\partial x^{\prime i}}{\partial x^k}x^k
$$

反変ベクトル

座標変換が行われる際に、座標ベクトルと同じ変換をされるベクトルで、下記のように変換されます。
添字は右上に書かれる習慣があります。

$$
V^{\prime i} = \frac{\partial x^{\prime i}}{\partial x^k}V^k
$$

共変ベクトル

座標変換が行われる際に、座標ベクトルとは逆の変換をされるベクトルで、下記のように変換されます。
添字は左下に書かれる習慣があります。

$$
U^{\prime}_i = \frac{\partial x^k}{\partial x^{\prime i}} U_k
$$

おまけ: 回転座標変換を考えた場合に陥る落とし穴

上記のように、反変ベクトル、共変ベクトルの確認を行う時に、回転座標変換を試そうとすると実は落とし穴にハマる。

これは回転座標変換の場合には、次のような式が成り立ってしまうがためです。

$$ \Sigma_k\frac{\partial x^{\prime i}}{\partial x^k} = \Sigma_k\frac{\partial x^k}{\partial x^{\prime i}} $$

これでは、反変ベクトルの変換も、共変ベクトルの変換も同じになってしまうので、全てのベクトルが座標ベクトルと同じ変換をしているように見えてしまいます。

実際にみてみますと、

$$ \begin{pmatrix} x^\prime \\ y^\prime \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} \sin\theta & \cos\theta \\ -\cos\theta & \sin\theta \end{pmatrix} \begin{pmatrix} x \\ y \end{pmatrix} $$

$$ \begin{pmatrix} x \\ y \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} \sin\theta & -\cos\theta \\ \cos\theta & \sin\theta \end{pmatrix} \begin{pmatrix} x^\prime \\ y^\prime \end{pmatrix} $$

であるから、例えば、 \( x^i=x, i=1 \) の場合を考えます。

$$
\begin{align}
\Sigma_k\frac{\partial x^{\prime i}}{\partial x^k} &= \left( \frac{\partial}{\partial x} + \frac{\partial}{\partial y} \right) x^\prime \\
&= \left( \frac{\partial}{\partial x} + \frac{\partial}{\partial y} \right) (x\sin\theta + y\cos \theta) \\
&= \sin\theta + \cos\theta \\
\Sigma_k\frac{\partial x^k}{\partial x^{\prime i}} &= \frac{\partial x}{\partial x^\prime} + \frac{\partial y}{\partial x^\prime} \\
&= \frac{\partial}{\partial x^\prime}(x^\prime\sin\theta – y^\prime\cos\theta) + \frac{\partial}{\partial x^\prime}(x^\prime\cos\theta + y^\prime\sin\theta) \\
&= \sin\theta + \cos\theta
\end{align}
$$

ね?同じになりました。

なので、反変ベクトル、共変ベクトルの確認を回転座標変換を用いて確認することができないということです。

これが落とし穴でした。私はこれで1時間くらいは時間を取られてしまいました。。。

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この記事を書いた人

天文の博士号をもつ理系パパ。
3歳の娘を子育て中。
最近はダイエットに挑戦中!

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