今日は私が修士2年生に書いたレポートをそのまま載せるよ。
そんなの需要あるのか???
ないよ。でも自分の手元だけでなく、どこかに公開した方が何かと良いかなと。
目的
簡単な熱力学を用いて、宇宙の温度\( T \) がスケールファクタ\(a\) に反比例していることを示す。
導出
熱平衡状態での輻射のエネルギー密度は
$$ \epsilon_\gamma = \sigma T^4 $$
である。ここで、\(\sigma\)はステファンボルツマン定数で
$$ \sigma = 5.67\times 10^{-8} [{\rm Wm^{-2}K^{-4}}] $$
である。
この輻射による圧力(輻射圧\( P_\gamma \) )はそのエネルギー密度の3分の1である。
$$ P_\gamma = \frac{\epsilon_\gamma}{3} $$
この導出には統計力学が必要であり、ここでは省略する。
宇宙の体積を\( V \)とすると、
$$ V \propto a^3 $$
である。ここで\( a \)はスケールファクターである。
熱力学第1法則から、
$$ {\rm d}Q = {\rm d}E + P{\rm d}V $$
である。一様な宇宙を仮定すると、熱量の変化ない。つまり断熱膨張を考える。
$$ {\rm d}Q = 0 $$
よって、宇宙のエネルギーを光子気体がすべて担っていると仮定すると、宇宙の内部エネルギーの時間変化は以下の様になる。
$$ \frac{{\rm d}E}{{\rm d}t} = -P(t)\frac{{\rm d}V}{{\rm d}t} $$
この宇宙内の光子の全エネルギー\( E \)、圧力\( P \)は
$$ E = \epsilon_\gamma V = \sigma T^4V \\
P = P_\gamma = \frac{\sigma T^4}{3} $$
となる。これを先の状態方程式に代入すると、
$$ \frac{{\rm d}}{{\rm d}t}(\sigma T^4V) = \frac{\sigma T^4}{3}\frac{{\rm d}V}{{\rm d}t} $$
となる。\( T, V \)が時間変化することに注意して、この微分方程式を整理すると、
$$ \frac{1}{T}\frac{{\rm d}T}{{\rm d}t} = -\frac{1}{3V}\frac{{\rm d}V}{{\rm d}t} $$
となる。ここで\( V \)をスケールファクタ\( a \)で表すと、
$$ \frac{{\rm d}}{{\rm d}t}(\ln T) = -\frac{{\rm d}}{{\rm d}t}(\ln a) $$
となる。この微分方程式を解くと、
$$ T = A\frac{1}{a} $$
となる。ここで\( A \)は積分定数である。
このように宇宙の中身を光子気体と仮定すると、宇宙の温度\( T \)はスケールファクタ\( a \)に反比例することがわかる。
つまり宇宙が膨張すれば、その分温度は下がっていくことになる。
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